特集 公衆衛生の原点を学ぶ―イギリスの挑戦
NHS改革による地方自治体を基盤とする新たな地域保健体制の確立に向けて
堀 真奈美
1
1東海大学教養学部人間環境学科
pp.14-19
発行日 2014年1月15日
Published Date 2014/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401102925
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はじめに
イギリス注1)では,国営のNHS(National Health Service)制度により原則無料で予防から治療,リハビリを含む包括的な医療サービスをすべての国民に提供している1).1948年のNHS創設時のNHS法(1946年制定)でも,「疾病予防・ケア・アフターケア」という項目があり,創設当初より,治療のみならず包括的な医療を指向していることが明らかである注2).その後もNHSは度重なる制度改革が行われてきたが,原則無料で包括的な医療を提供するという制度の根幹に変更はない.
だが,これまでの政権交代などに伴う組織機構改革により,疾病予防を含む地域保健における中心的役割を担う機関は,同一ではない.直近のキャメロン改革により,2013年3月までは,プライマリケアトラスト(primary care trust;PCT)と呼ばれるNHS傘下の公的組織が中心的な役割を担ってきたのだが,同年4月以降,公衆衛生,疾病予防を含む地域保健の権限,財源は,地方自治体(local authorities)に完全に移行されることになった.本稿では,新たに責任主体となった地方自治体がどのように地域保健体制を構築しつつあるのかを述べる.
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