連載 講座/健康で持続的な働き甲斐のある労働へ―新しい仕組みをつくろう・19
チームとしての産業保健活動―産業医以外の職種はどう位置づけられ活躍すべきか
五十嵐 千代
1,2
1東京工科大学医療保健学部産業保健実践研究センター
2東京工科大学医療保健学部看護学科
pp.848-852
発行日 2013年10月15日
Published Date 2013/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401102864
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はじめに
わが国を取り巻く社会情勢は加速するグルーバル化の中で,労働環境も変化を強いられている.産業構造の特徴として,第三次産業化,労働者の高齢化,国際化,労働の多様化,女性労働の増加が挙げられ,それに伴い働く人たちの健康問題も生活習慣病だけでなく,メンタルヘルス,過重労働などがある.また,最近では印刷業従事者の胆管癌にみられる,有害物を取り扱う労働者に職業性疾患が見つかるなど,労働衛生の問題が露呈しているといわざるを得ない.
一方,わが国の労働政策においては,ILO(国際労働機関)の187号条約である「国内の職業上の安全及び健康を不断に改善すべく国内政策,国内制度,国内計画を遂行する」というものは世界に先駆け批准したものの,「すべての労働者に等しく産業保健サービスを提供する」というILO161号条約はまだ批准できていない現状がある.これは,労働安全衛生法が,労働者数50人以上の事業場に報告義務があると定めていることから,労働者数50人未満の事業場で働く約3,500万人が法的に守られていない可能性があるからと考える.
中小企業が企業全体の9割を占める日本において,そこで働く人々の健康をどう守り,支援しているのかが大きな課題となっている.
筆者は内閣府自殺対策推進会議の委員であることから,労働者のうつ病・自殺対策の切り口から,チームとして取り組むべき産業保健活動について述べることとする.
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