連載 公衆衛生Up-To-Date・8
[国立長寿医療研究センター発信:その2]
認知症の危険因子と予防に関するエビデンス
島田 裕之
1
1国立長寿医療研究センター老年学・社会科学研究センター自立支援開発研究部自立支援システム開発室
pp.675-677
発行日 2013年8月15日
Published Date 2013/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401102816
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認知症の危険因子
認知症は加齢とともに増加し,80歳代から急激に有病率が向上し,90歳以上では地域にかかわらず30%以上の高齢者が認知症を有すると推定されている(図1,a)1).特にアジアにおける高齢者数の増大は,今後40年間において認知症者の著しい増大を迎えると予想されている(図1,b)1).アルツハイマー病および認知症の危険因子は,加齢の過程に伴い出現し,変化し,あるいは幾重にも重なり,その結果,高齢期における脳の機能的予備力を低下させる原因となるが,この20年間に行動,社会科学的側面からアルツハイマー病および認知症の危険因子が多数報告され,一定の見解がまとまりつつある.
例えば,2004年に報告されたFratiglioniら2)のレビューを参考に認知症の危険因子と保護因子をまとめると,図2のようになる.若年期においては遺伝的あるいは社会・経済的な危険因子が存在し,教育を受ける機会が減少すると認知的予備力を十分蓄えることができないことなどが,将来の認知症の発症に関連すると考えられている.成人期においては,高血圧,脂質異常,糖尿病などの生活習慣に関連した危険因子が現れる.これらは脳血管疾患のみではなくアルツハイマー病の危険因子でもあり,将来の認知症を予防するためには,服薬管理と食事療法3)を実践することが重要な課題となる.
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