特集 スクリーニング―その進化と課題
新生児聴覚スクリーニングの成果と今後の展望
福島 邦博
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1岡山大学大学院医歯学総合研究科耳鼻咽喉・頭頸部外科
pp.858-861
発行日 2012年11月15日
Published Date 2012/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401102577
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はじめに―新生児聴覚スクリーニングとは
新生児期に存在する難聴は出生1000に対して1人の割合で発生する,非常に頻度の高い先天性疾患の一つである.生直後に引き続く3~5年の間は言語習得に非常に感受性の高い時期(言語習得期)でもあり,この頃に音声による言語的なインプットが乏しい場合には,音声を用いた言語習得に著しい不利益を生じる(言語習得前難聴).小児期に存在する言語発達の遅れは,さらにその後の音声コミュニケーションや,教室内での学習に著しい影響を与え,結果として就学や就労に影響する.すなわち,聴覚障害はその後に言語障害を続発することによって,生活の質により広範な影響を与える.このため従来から,新生児期の難聴はなるべく早期に発見し,早期に対策を実施することによって,言語発達障害を予防・軽減することが重要であるとされていた.加えて近年,①人工内耳や,デジタル補聴器の技術的進歩から,従来は音声言語による言語習得が困難であると考えられていた高度~最重度難聴のケースにも広く対策が行えるようになったこと,②手話が社会的に広く認知されることによって,手話言語による言語習得にも社会的基盤が整備されて来つつあること,などから,早期の介入によって,より良好な言語発達が期待出来る時代となってきた.
こうした背景と連動しながら,2001年から国のモデル事業として岡山県・秋田県などの地域で新生児聴覚スクリーニングが開始され,さらにモデル事業終了後も,多くの地域で新生児聴覚スクリーニングが実施されるようになってきた.
本稿では,新生児聴覚スクリーニングの現状とその成果について,岡山県における変化と本邦での状況を報告する.
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