特別寄稿
被災地での医療支援活動と情報収集網の構築
浦部 大策
1
,
帖佐 徹
1
,
岩田 欧介
2
,
松葉 剛
3
1聖マリア病院
2久留米大学小児科
3東京臨海病院
pp.712-716
発行日 2012年9月15日
Published Date 2012/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401102527
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大災害が起こると,診療所や病院施設,医療従事者も様々な程度・様態で被災する一方,大量の外傷患者が出現することで,診療の現場は大混乱に陥る.その場所自体がどんな状態にあるのか,今何がより必要か,どんな介入が可能か,内部事情を掴めない状況になる.このような混乱した場所で医療支援に取り組むのであれば,現地の現状分析,目標設定,活動内容選定,といった論理を構築して,その場所が必要とするものを踏まえて活動展開する努力が必要である.しかし,日常の仕組みが壊れた中で,現地にどのような医療が必要か,現地事情を反映できるような情報を収集するのは難しい.東日本大震災で現地支援に赴いた医療ボランティアチームの多くも,現地でどのような医療が求められているのか情報を持たないまま,大災害では診療ニーズが高いという推測を基に診療活動を展開していた.
被災地に起こる被害様態は災害の種類や発生場所によって異なり,被災者を取り巻く医療環境も時間経過と共に変化する.診療支援が現地で常に第一に求められ続けるとは限らない.したがって推測で開始した医療活動は,現地事情が判るに従い,ニーズを踏まえた論理的な活動となるよう活動内容も修正されていくべきである.ところが実際の災害支援の現場では,診療のニーズがどの程度あるかの判断だけで,活動内容の見直しはなされていない.被災地での医療事情を把握できるような情報収集が不十分であり,発災後時間が経っても,現地医療ニーズを客観的に把握できるような状況には至らないからである.
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