特集 運動とは何か
人々にとっての「スポーツ」と「運動」の意味を考える
西山 哲郎
1
1関西大学人間健康学部
pp.428-431
発行日 2012年6月15日
Published Date 2012/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401102438
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はじめに
今号の「運動とは何か」と銘打たれた特集は,専門アスリートを中心とした競争志向のスポーツ文化を尊重しつつも,スポーツを地域の社交のツールとして捉え直し,日々の生活に溶け込んだスポーツ実践(それを本誌では「運動」と呼ぶのだろう)を促進することによって,健康的な生活文化の建設に寄与するために企画されたと伺っている.昨今の行政府の動き,たとえば文部科学省が2010年に策定した「スポーツ立国戦略」1)や2011年に衆参両院で可決された「スポーツ基本法」2)では,国威高揚やスポーツ産業育成のために競技スポーツの振興が重要視されているものの,その成果は最終的に国民のスポーツ実践(運動)を牽引するものとして期待されている.すなわち,現行の政策展開に見られる,スポーツを地域社会の再生や健康で豊かな生活の実現に役立てようとする狙いは,本特集と一致している.
こうした課題設定が時宜を得たものであるのは間違いないとしても,そもそも運動が嫌いな人やスポーツの文化的価値に懐疑的な人にまで説得的な議論をするには,少し遠回りになっても問題の外枠から議論する必要を感じている.人間の価値観の多様性を支持する社会学者として,より多面的な視点を設定してこの問題に取り組みたい.
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