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はじめに~超高齢社会と運動器疾患
2011年9月の総務省の発表では,わが国では総人口1億2,788万人に対し,65歳以上の人口が2,980万人に達しており,高齢化率は23.3%,定義上,超高齢社会(高齢化率21%以上)となっている.今後も高齢化率は上昇を続け,2025年には30%を超えると試算されている1).
日本人の平均寿命は,男性79.6歳,女性は86.4歳で,毎年徐々に伸びている.また,平均余命から計算すると,たとえば現在65歳の高齢者の「推定寿命」(実年齢+平均余命)は,男性で83.9歳,女性では89.0歳に達している.さらに年齢の高い女性では,推定寿命は90歳を超えている2).
高齢者人口の増加とともに,介護が必要な高齢者が増えた.介護保険制度が始まった2000年における要介護者は220万人であったが,2010年10月には500万人を超えている3).今後も要介護者数は増加し続け,2025年には700万人を超えるとも試算されている4).今後ますます,介護に関わる財政コスト,マンパワーや施設が不足する懸念が大きいと思われる.
厚生労働省「国民生活基礎調査」(平成19年)によると,要介護認定者のうち,運動器の障害が原因となったものが全体の2割を超えている.さらに男女別で見ると,全要介護者の7割に達する女性の場合,「転倒・骨折」と「関節疾患」を合わせると3割近くになる5).したがって要介護者を減らすためには,特に女性の高齢者における運動機能の維持や運動器疾患の予防が重要である.
こうした視点は,高齢者の運動器疾患を考える上できわめて重要で,生命を脅かす疾患は多くないが,ADL(Activities of Daily Living)やQOL(Quality Of Life),健康寿命,自立や介護といった要素に大きく関係する.それを念頭に置いて,本稿では加齢に伴う運動器の変化,頻度の高い高齢者の運動器疾患,そしてロコモティブシンドロームについて概説する.
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