連載 人を癒す自然との絆・27
児童養護施設退所後に備えるメンターリング・プログラム
大塚 敦子
pp.796-797
発行日 2011年10月15日
Published Date 2011/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401102238
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日本と同様,アメリカでも,里親家庭や児童養護施設で暮らしていた子どもたちは,基本的に18歳になったら独り立ちしなければならない.虐待やネグレクトを経験し,トラウマを抱えた少年少女たちの多くに共通するのは,年齢相応の学力やソーシャル・スキルが不足していることだ.また,健全な人間関係を築くのが苦手で,セルフ・エスティーム(自尊感情)の低い子も多い.それが,18歳の誕生日を迎えたとたん一人前の大人と見なされ,それまでの保護のシステムから出されてしまうのだから大変だ.社会に出てやっていくだけの十分な準備がなければ,とても自立することはできず,やむなく暴力的な家族の元に戻らざるを得ないこともある.
2010年5月号(本誌74巻5号408頁)でも紹介したカリフォルニアの「忘れな草」牧場は,1992年,ヒューメイン・ソサエティという全米最大規模のアニマル・シェルターのプログラムのひとつとして始まったが,2006年に「Forget Me Not Farm Children's Services」という非営利団体として独立.2009年からは司法省の助成を受け,里親家庭やグループホームで育った14~19歳までの少年少女を対象に「メンターリング・プログラム」と呼ばれる職業訓練を実施している.プログラムが目指すのは,アニマル・シェルターでの仕事を経験することによって,少年少女たちに生活スキル,ソーシャル・スキル,初歩的な職業スキルを身に付けさせることである.
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