映画の時間
―このちいさな命を救いたい.大切なことは何かを教えてくれる希望の物語―いのちの子ども
桜山 豊夫
pp.537
発行日 2011年7月15日
Published Date 2011/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401102170
- 有料閲覧
- 文献概要
イスラエルとの紛争下にあるパレスチナのガザ地区で生まれた,生後4か月半になるムハンマドは,先天性免疫不全症候群に罹っています.病状が重くなり,母親ライーダとともに,ガザに隣接するイスラエルのテルハショメール医療センターに搬送されました.映画は,ジャーナリストでもあるエルダール監督が,この医療センターを訪ねる場面から始まります.監督自らが担当するナレーションにより,親子の置かれている状況がわかってきます.
ガザ地区の住民はイスラエルに入国することは原則として許可されず,例外的に,重病のために治療を必要とする場合だけは,イスラエル側の医療センターに入院することが許されています.免疫不全のため陽圧の無菌室に入院しているムハンマドですが,主治医のソメフ医師は早急な骨髄移植が必要と考えています.しかし,貧しいガザ地区の住民であるムハンマドの家族には,医療費を工面することはできません.他に有効な治療法はなく,骨髄移植を行わないのであれば,ムハンマドはガザ地区に帰らなければなりません.それは彼の死を意味します.
Copyright © 2011, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.