日本列島
炭疽病の発生について—沖縄
伊波 茂雄
1
1沖繩県環境保健部
pp.564
発行日 1982年8月15日
Published Date 1982/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401206571
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沖縄県食肉衛生検査所は昭和57年2月25日,那覇市内の或ると畜場に持ち込まれた豚をと殺解体し検査したところ,その回腸部に病変を認めたのでサンプリングし,精密検査を行った.病変は1頭のみに認められ,サンプルの細菌検索の結果,連鎖大桿菌が多数検出され,豚の腸炎型炭疽に類似しているということで,県家畜衛生試験場に病性検査を依頼した.同試験場によりマウス接種テストなども含めた詳細な検査を実施した結果,3月28日には家畜の法定伝染病である炭疽病と決定され,直ちに関係機関に連絡された.家畜伝染病予防法に基づく告示がなされ,①当該養豚場からの家畜の移動禁止,消毒,②畜舎から2km以内の立入り検査,③当該と畜場に搬入された(病豚とともに)家畜の隔離,などの防圧措置が講ぜられた.当該養豚場には豚約460頭,と畜場には約360頭が隔離されたが,幸いその中からの炭疽病発生は全くなかった.なお約10日間の後には2次発生もなく厳重な消毒も行われたことから,隔離などの防疫体制は解除され,と畜場も業務を再開した.炭疽は牛,馬,羊,豚などの草食獣に発生する急性伝染病で,炭疽菌は土壌菌であり,病獣の排出物,屍体,毛皮,骨粉などから感染する.時には人間にも感染し,皮膚に潰瘍を生じたり,敗血症を起こしたりする人畜共通伝染病であるが,幸い今回は優秀なと畜検査員により発見され,事態の拡大を防止できたことは賞賛に値するものである.
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