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あとがき
阿彦 忠之
pp.1060
発行日 2010年12月15日
Published Date 2010/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101989
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私が本格的に衛生行政の仕事を始めたころの救急医療のトピックスは,救急救命士の養成とメディカルコントロール(MC)体制の構築でした.救急医療を救うための新たな制度の幕開けを予感して,保健所主催の会議の冒頭,張り切って所長としての所感を述べたつもりが,誤って「救命救急士」という表現を繰り返し,失笑を買ったことが忘れられません.その反撃(?)という気持ちも少しあって,「MCという用語はわかりにくい.別の呼び方はないのですか?」と消防担当者に質問したことを今でも鮮明に覚えております.MCという単語からは,救急救命士等による救急活動の「質を保証(quality assurance)」を医学的見地から総合的に行うという本来の意味が,全く連想できなかったからでした.
その後もMCに替わる新しい用語は生まれなかったものの,救急医療を取り巻く環境が厳しさを増す中で,救急医療の質を高め,救急医療を救うための取り組みは確実に進化(深化)しています.「救急医療は崩壊の危機」といった報道もなされますが,今号の特集論文を通読すると,明るい光もたくさん見られました.救急医療に関する地域住民の理解と住民参加型活動の重要性,「守りの救急医療」から「攻めの救急医療」への転換,DMATで代表される標準化とシステム化を包含した人材育成が平時の救急医療体制の強化という波及効果を生んでいること,などです.そして何よりも,救急医療を救うことが「医療再生」の必須条件であり,それが可能であることを実感した特集でした.
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