特集 救急医療を救う
わが国の救急医療の問題点と解決策
有賀 徹
1
1昭和大学医学部救急医学講座
pp.982-986
発行日 2010年12月15日
Published Date 2010/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101966
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はじめに
わが国における救急医療は,需要の増大が年余にわたって顕著になっていたにもかかわらず,供給そのものが漸次減少の途を辿り,ついに需要と供給がショートして今日に至っている.かつて昭和40年代は,交通外傷による救急患者が“たらい廻し”のような状況にさらされ,昭和50年代から初期・二次・三次救急医療体制の整備が進められてきた.一方,今日の救急患者の増加は,高齢化に伴う内因性疾患の患者増による.
救急医療の現状と問題点を論ずるなら,わが国の医療や福祉などに関する政策そのものに言及しながら,解決策へと議論を展開すべきであろう.加えて,将来のことをより深く考えるなら,一般(総合)医ないし家庭医から各診療科専門医へなどという医療提供のあり方そのものについて,大いに議論すべきである1).
しかし,根治的でなく対症療法としてでも手を打たないと,救急患者の不幸に拍車が掛かるという現実がある.
そこで,本稿では患者の緊急度(重症度)に応じて,救急医療という限りある社会資源の投入について,言わば傾斜配分をする,つまり患者の病態から緊急度を判断し選別するという手法の意義について論じつつ,標記のテーマについて考察を進めたい.
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