沈思黙考
「幸福」を考える・2
林 謙治
1
1国立保健医療科学院
pp.810
発行日 2010年9月15日
Published Date 2010/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101914
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前回ブータンの国民総幸福度(GNH:Gross National Happiness)という概念指標を紹介した.GNHは①公正な社会経済発展,②環境保全,③文化保存,④よい統治,の4本柱からなり,これに関係する9つの領域を代表する個別指標が設定されている.具体的には①時間の使い方,②健康,③地域の活力,④よい統治,⑤文化,⑥教育,⑦生活水準,⑧生態系,⑨心理的な安寧,の9つである.指標の着想は,ブータンの隣国インドのノーベル経済学賞受賞者アルマティア・センの思想と相通じるところがある.センの影響で国連開発計画(UNDP)が人間開発指数という指標を打ち出したと言われている.人間開発指数は国民の所得そのものよりも潜在能力に焦点を合わせている.本指数は1人当たりのGDP,平均寿命,教育の3要素から構成され,1人当たりのGDPは個人が享受できる財・サービスの可能性,平均寿命はそれを享受できる平均期間,教育はそれを享受できる能力を表現すると考えられている.この3つの総合が福祉の水準を決定するとしている.
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