特集 がん予防
がん予防に関する感染症学的アプローチ
②肝がん予防策としてのウイルス性肝炎対策の効果
田中 純子
1
1広島大学大学院医歯薬学総合研究科疫学・疾病制御学
pp.894-899
発行日 2009年12月15日
Published Date 2009/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101685
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肝がん死亡の年次推移とその成因
わが国における悪性新生物による死亡を部位別に見ると,「肝」(肝および肝内胆管の悪性新生物,人口動態統計1))による死亡は,1975年より増加の一途をたどり,1995年に初めて年間3万人を上回った.肝がんによる死亡は,2002年には人口10万人対27.5人とピークを示したのち,2007年ではやや減少し,人口10万人対26.6人となった.日本肝癌研究会による調査成績2)および人口動態統計資料をもとに算出した成因別に見た肝がん死亡の推移を見ると,1975年以降,現在に至るまでB型肝炎ウイルス(HBV)の持続感染に起因する肝がんは増減がないままで推移しており,わが国で増え続けている肝がんはHBVの持続感染によらない(非A非B型の)肝がんであることが明らかとなっている.C型肝炎ウイルス(HCV)感染の診断が可能となった1992年以降について見ると,非A非B型の肝がんの95%以上はHCVの持続感染に起因する肝がん(C型の肝がん)であることが明らかになっている3).
しかし2000年代(2002~2003年2))に入り,HBV由来の肝がん死亡割合には変化がないものの,HCV由来の割合がやや減少し(70%),不明の原因(非A非B非C型)に由来する肝がん死亡の割合が微増傾向にあるが,その理由については現在のところ不明である.
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