特集 ウイルス肝炎の疫学と予防
ウイルス肝炎の予防—A型肝炎の予防
井上 長三
1
,
矢野 右人
1
Osami INOUE
1
,
Michitami YANO
1
1国立長崎中央病院臨床研究部
pp.755-756
発行日 1990年11月15日
Published Date 1990/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401902912
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■はじめに
A型肝炎は,糞便中に排出されたA型肝炎ウイルスの経口感染により伝搬する.衛生環境の改善とともに,A型肝炎ウイルス感染の発生が激減したと思われ,わが国におけるA型肝炎抗体保有率をみても年齢依存性である.高齢者ほど陽性率は高く若年者では低く,しかも年とともに抗体保有者が高齢化し,全体的には抗体保有者が次第に少なくなっている.このことはA型肝炎ウイルスの感染可能者が増えていることになる.わが国におけるA型肝炎は,現在でも散発性急性肝炎の1/3強を占め,周期的に流行を来す傾向もあり,今後の予防対策が重要である.現在A型肝炎ワクチンが臨床試験の最終段階に入っているが,これまでのA型肝炎に関する知見をまとめ,予防対策に有用と思われる点について述べる.
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