連載 「ケア」の関係性が変わる・4
在宅サービスにおける福祉と医療を取り巻く現状と課題
西口 守
1
1国際医療福祉大学医療福祉学部医療福利学科
pp.349-351
発行日 2001年4月1日
Published Date 2001/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541903255
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在宅ケアの流れを振り返る
1.「親を看取らなければ地獄に堕ちる」という伝統
わが国において,子が親を看取るというのは特別なことではなかった.例えば,新村拓は「(八世紀初めの民衆は)子が病めば親が〈見取り(看護),親が病めば子が〉見取る」(注1)ものであったと述べ,民衆の中に儒教・仏教思想に支えられた老親扶養観が存在していたことを明らかにしている.特に注目すべきはこの老親扶養観が「老親を見捨てることは呪いを受けて発病し,地獄に堕ちることの引き替え」(注2)とまでいわれるほどの強い縛りを民衆に強いることで形成された事実であろう.
ここから考えられることはわが国の老親扶養は,自発的というより社会システムとしてのなんらかの強制力が働いている中で行われて点にあろう.よくいわれる「子が親を看取る美風」は,明らかに多くの犠牲の上に成り立っているものであることを改めて認識しなければなるまい.
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