連載 ドラマティックな公衆衛生―先達たちの物語・5
農民とともに:「愛情こそが最高の技術」―若月俊一
神馬 征峰
1
1東京大学大学院医学系研究科・国際地域保健学教室
pp.374-377
発行日 2009年5月15日
Published Date 2009/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101561
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…医学は,抽象的な「医学」のお化けのためにあるのではない(文献1),p25)
「医学」のお化け
若月俊一(1910年6月26日~2006年8月22日)は,長野県佐久市にある佐久総合病院を育て,日本において農村医学を確立した外科医である.と同時に,農村における公衆衛生の改善に尽くした.
若月が佐久の農村に入ったのは第二次世界大戦敗戦前の昭和20年3月,34歳の時であった.これまでに紹介した先達に比べるとスタートラインが遅い,かのように見える.しかしながら,それに先駆け,工場労働者の健康問題・社会問題に関心を抱き,論文を書いている.おそらくはそれが1つの原因で治安維持法違反として逮捕・投獄という経験もしている.投獄されたのは昭和19年1月から12月まで.岩波新書に若月の評伝を書いた南木佳士2)によれば,その経験が,若月の「目だけが笑っていない」笑顔の原因ではないかと言う.
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