特集 公衆衛生の人づくり・1 変わりゆく地域保健の人材育成
公衆衛生活動と科学する心
前田 秀雄
1
1東京都健康安全研究センター
pp.104-106
発行日 2009年2月15日
Published Date 2009/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101493
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人の健康を取り巻く環境は時代の変遷と共に絶え間なく変化するものであり,常により良い公衆衛生対策を実行するためには不断の探求心が不可欠だ.また,住民が住まい生きる地域社会の実情は様々であるため,画一的な方法論は通用せず,各自治体が独自の工夫を行うことが求められている.結果として純粋な研究職でなくとも,公衆衛生技術職が常に理論と実践を包括して活動することは,至極当然な帰結である.公衆衛生はウィンスロウの定義の通り「疾病を予防し健康を増進する『科学』でありかつ『技術』」なのだ.
しかしながら,現在,地域の第一線で活動する公衆衛生技術職の研究活動が非常に厳しい環境に置かれている.もちろん非常に闊達な研究活動を行っている保健所・保健センター,あるいは職員も存在するが,全体的には沈滞感が感じられる.それを象徴しているのは日本公衆衛生学会総会ではないだろうか.まだ昭和と呼ばれていた頃の総会抄録集を開くと,日々の活動の中からの疑問や探求心など発表者の高揚感や現場の熱気が,肉筆のB5版の紙面から湧き出してくるような錯覚を感じる.会場においても,学会の大家から就職したての青臭い新人職員まで,健康問題の「現実」にこだわった様々な価値観が交錯し,種々の分野で公衆衛生に関わる者が一堂に会して意見交換がなされる,これが公衆衛生の研究の魅力そのものではなかったか.
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