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特集 地域精神医学—その理論と実践
第63回日本精神神経学会総会シンポジウム
公衆衛生活動の立場から
Principles and Practice of Community Psychiatry: Some Experiences in Public Mental Health Activity
橋本 正己
1
M. Hashimoto
1
1国立公衆衛生院
1National Institute of Public Health
pp.813-815
発行日 1966年10月15日
Published Date 1966/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201077
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I.公衆衛生活動の変遷と精神衛生
近代的な公衆衛生活動public health practiceは,前世紀の初頭,第一次産業革命を契機とし,都市への人口集中と生産の爆発的な発展の半面で深刻な社会問題となつた「貧困と疾病の悪循環」に対する社会防衛的,人道主義的なたたかいとして,イギリスに台頭したものである。すなわち,その発展過程を巨視的にみると,18世紀末葉から19世紀初頭の産業革命の嵐と怒濤の時代を背景として勃興した婦人幼少年の労働条件やスラムの改善運動にみられる人道主義的な前史的段階をへて,方法論的にみれば,まず,スラム改革,上下水道,汚物処理などの都市生江環境の改善と衛生行政制度の導入による第1期(1850〜1900年)に始まり,20世紀の初頭以降,医学とくに予防医学の画期的な進歩に裏づけられて,母子保健,保健婦事業,疾病予防などのいわゆる対人保健活動personal health careを特色とする第2期(1900〜1950年)に発展した。さらに第二次世界大戦の悲惨な経験をへて,医学の進歩,技術革新に支えられ,人口の老齢化,疾病構造の変化,社会保障制度の整備などによつて,いわゆる綜合保健活動comprehensive health careとして,健康増進,疾病予防,医療およびリハビリテーションを一貫した総合的な活動を指向しつつこんにちにいたつているといえる。このような過程は,産業革命と資本主義の先進国であるイギリスの場合にもつとも典型的にみられるが,欧米諸国においては,ほぼ同様の発展過程が示されている。
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