特集 現代の貧困と健康
貧困と健康の関係―海外の文献から
岩尾 総一郎
1,2
,
松原 弘子
3
1国際医療福祉大学
2前WHO神戸センター
3国際医療福祉大学大学院保健医療学科
pp.692-695
発行日 2008年9月15日
Published Date 2008/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101394
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はじめに
世界保健機関(WHO)がこれまでに発表した健康と貧困に関する世界の統計数値には,目を見張るものがある.例えば,下記である.
●世界人口60億人の内,10億人以上が食料,水,下水処理,ヘルスケア,住居,教育に必要な基本的なものを充足できていない.
●全世界で11億人が栄養障害を来たしている.
●推定で12億人が1日1ドル未満で暮らしている.
●出生時余命は,先進工業国が77年に対して,低開発国では50年に満たない.
●発展途上国では7億9,900万人が,先進工業国と発展移行国では4,100万人が栄養不良である.
●地球全体で予防可能な疾患で亡くなっている子どもは,1日に3万人である.
●妊婦死亡のリスクは,ヨーロッパが1/4,000であるのに対して,人口のほぼ半分が絶対的貧困層であるサハラ以南では1/12になる.
貧困と健康の関係を考えるとき,どちらを説明変数とし,どちらを目的変数とするか,議論が出る.2001年12月にまとめられたWHO「マクロ経済と健康に関する委員会」報告では,病気と貧困は双方向に作用するというものであった.つまり,「不健康は貧困の原因であるだけでなく結果でもある」というのが,大方の納得できる理解であろう.本稿では,貧困と健康の関係について,いくつかの疫学的研究結果を基に,その事実を検証していきたい.
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