―カゾクヲコエテ―超・家族・3
家事労働の価格はなぜ安いのか?
上野 千鶴子
1
1東京大学大学院
pp.234-235
発行日 2000年3月15日
Published Date 2000/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688902138
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介護保険法のもとで厚生省が提示した居宅支援事業の価格設定では,家事援助のヘルパー賃金がほぼ地域最低賃金並みに抑えられることを前回指摘した.そこで立てた問いはこういうものだ―なぜ家事労働の価格は安いのか?
もともと女が無償でおこなっていた労働だから,つまり利用者から見ればタダで手に入るはずだったサービスだから,というのもひとつの理由だろう.もうひとつ,家事は「女なら誰でもできる」,すなわち特定の技術や訓練がなくてもその気になりさえすれば誰にでも可能な非熟練労働と見なされていることも理由だろう.家事労働の価格競争の相手が,「タダ働き」であるとしたら,これは逆立ちしてもかないっこない,べつな言い方をすれば,誰かがタダで家事労働を引き受けているかぎり,家事労働の市場価値は上がる可能性が少ない,ということでもある.
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