特集 うつの時代―うつ病を改めて理解する
子どものうつ病
傳田 健三
1
1北海道大学大学院保健科学研究院生活機能学分野
pp.355-358
発行日 2008年5月15日
Published Date 2008/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101314
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子どものうつ病は見逃されてきた
近年,子どものうつ病が一般に認識されているよりもずっと多く存在するということが明らかになってきた.しかも,従来考えられてきたほど楽観はできず,適切な治療が行われなければ,青年あるいは大人になって再発したり,他の様々な障害を合併したり,対人関係や社会生活における障害が持ち越されてしまう場合も少なくない.今や子どものうつ病を正確に診断し,適切な治療と予防を行うことが急務となっている1,2).
ところがわが国では,いまだに児童精神科医の間でさえ,子どものうつ病に対する認識は乏しいと言わざるを得ない.これまで,わが国では子どものうつ病という現象は見逃されてきたと言うことができるだろう.子どもの不適応を何でも精神障害と関連づけて考えることには慎重でなければならないが,近年見られる不登校やいじめの問題において,不適応を起こして落ち込んだり,引きこもったり,自殺を試みたりする子どもたちを,今一度,うつ病という視点から検討する必要もあるのではないだろうか1,2).
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