特別寄稿
コスタリカの知恵をアジアで実践する
大山 勇一
1
1城北法律事務所
pp.42-46
発行日 2008年1月15日
Published Date 2008/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101233
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軍隊を捨てた国コスタリカ
みなさんは「軍隊を捨てた国」コスタリカ共和国をご存知ですか?南北アメリカ大陸の中間に位置する人口400万人の国です(図).中米のコスタリカ共和国では,子どもの頃から「紛争が起きたときには,暴力ではなく話し合いで解決していこう」という教育がなされると言います.そして「身近なところでの問題を話し合いで解決していくのと同じように,国家レベルでの紛争も対話で解決していけるはずだ」という考え方を市民が共有していると言います.私は2002年1~2月にかけてコスタリカ平和視察団に加わり,コスタリカの市民から話を聞き,同国の歴史を学ぶ中で,これらの考え方が市民にしっかりと根付いていることを大変な驚きをもって受け止めました.
コスタリカは,1948年に軍隊を放棄しました.そのときの記念式典において,当時の指導者であったホセ・フィゲーレス氏は「軍隊はしばしば独裁体制によって,国民を力づくで抑圧してきた.われわれは民主的な話し合いの道を選ぶ.したがって,政権維持のための武器はもういらない」と宣言しました.「軍隊は国民を守らない」という本質をよく示しているスピーチだと思います.そして翌年に制定された憲法によって軍隊(常備軍)を正式に廃止しています.具体的には,憲法12条1項で「恒久的制度としての軍隊は禁止する」とあります.もっとも,同条3項で「大陸間協定により若しくは国防のためにのみ,軍隊を組織することができる」とありますが,憲法制定以来軍隊が組織されたことは一度もありません.
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