特集 過労死・過労自死
扉
pp.281
発行日 2007年4月15日
Published Date 2007/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101021
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
仕事は私たちの人生を幸福にするものでなくてはならないはずです.少なくとも私たちが幸せな人生を送っていくための糧を得るためのもののはずです.しかし,昔から,仕事に伴う健康被害が存在し,これを防ぐことが,労働衛生,産業保健として,公衆衛生の重要なテーマの1つでした.いわゆる労働衛生では,従来,職業病,職場の物理的・化学的環境,現業での事故や中毒といった災害などが対象とされてきました.しかし,これらとは性格の異なる長時間労働や不規則勤務などによる過労が原因となる疾病,死亡の問題が存在しています.
そして,近年,この労働によって引き起こされる過労の問題が大きくなってきているように思えます.すなわち,バブル崩壊後の不況が続いた中,企業の労働環境は激変し,成果主義の導入による過剰なストレスや,裁量労働制の導入と人員削減によって生じた長時間労働が,労働者の健康に大きな影響を与え,過労死,うつ病や過労自死などの増大を招いていることが指摘されています.
これは,ごく普通に会社でホワイトカラーとして働いている人が,仕事が原因となって病み,死ぬ可能性のある時代が来ていることを意味していると思えます.さらに現在議論されているホワイトカラー・エグゼンプションが導入されると,今後,この傾向はますます強まると思われます.
このような状況を検証するとともに,都道府県,市町村の公衆衛生従事者が,産業医,産業保健師と連携して,過重労働による健康被害に対して何ができるかを改めて考えるために本特集を企画しました.
Copyright © 2007, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.