連載 医学ジャーナルで世界を読む・2
「お勉強」も「お楽しみ」も
坪野 吉孝
1
1東北大学大学院医学系研究科公衆衛生学分野
pp.88-89
発行日 2003年2月1日
Published Date 2003/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100810
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私が栄養疫学を専攻したきっかけの1つは,1990年12月13日号の『New England Journal of Medicine』に報告された,ハーバード大学の前向きコホート研究だ(N Engl J Med 1990; 323: 1664-72).この論文は,米国の女性看護師を対象として1976年に開始されたNurses' Health Studyのデータを使って,肉類や動物性脂肪による結腸がんリスクの上昇を示した.約9万人という大規模な集団に対して,さまざまな栄養素や食品の習慣的な摂取量を,個人ごとに調査していることにまず驚いた.しかもそれを,わずか61項目の食品の摂取頻度を自記式の調査票で質問するだけで評価していることに,さらに驚いた.同じ個人でも毎日変化する食生活を,そんな簡単な方法で,どこまで正確に調べることができるのだろうか.こうした驚きが,栄養疫学の方法論的研究を始める契機になった.
それから10年以上過ぎた今日でも,栄養と健康についての興味深い知見が,このNurses' Health Studyから次々と報告されている.最近の例として,ピーナツなどの種実類(飽和脂肪酸に富み,インスリン感受性の改善効果が示唆されている)の摂取による,2型糖尿病のリスク低下を示した報告がある(表の3).また,アルコール飲用とホルモン剤使用で閉経後乳がんのリスクが上昇するという論文もある(表の2).
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