発言あり
大学の公衆衛生教育
岸 玲子
1
,
重松 逸造
2,3
,
角田 文男
4
1札幌医科大学公衆衛生学教室
2(財)放射線影響研究所
3日本公衆衛生学会
4岩手医科大学医学部衛生学公衆衛生学
pp.365-367
発行日 1991年6月15日
Published Date 1991/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401900353
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「社会科学の目と『卒後教育システム』の確立を」
臨床医であれ,公衆衛生専門家であれ,どれだけパブリック・ヘルス・マインドを持った医師を養成することができたか(できるか)が,大学における公衆衛生教育の成果の一つではなかろうか.率直に見ると,20年前(筆者が医学部の学生であった頃)も現在も医学生が公衆衛生学に向ける関心はそれほど高くはないようだ.残念だが,その意味ではいまだ多くの大学で,公衆衛生教育が十分成功しているとは言い難いとも言える.
医学部の教育の主たる目的が,個人としての患者を対象とした医師の養成にあるのに対し,公衆衛生の目的は集団全体を基礎として疾病の予防を図り,健康の増進を進めることにあるのはいうまでもない.医学部を目指した多くの学生にとって,臨床医学に最も魅力を感じるのは無理がないだろう.しかし医学生の関心が,いつまでも個人の病気の発見や治療にとどまり,なかなか社会的な問題,たとえば地域や職域の保健医療の問題発掘や,国境を越えた国際保健の問題へと広がっていかないのはなぜだろうか.原因は色々あげられようが,ここでは二つの点を指摘したい.
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