視点
北海道大学大学院における公衆衛生人材の育成
玉腰 暁子
1
1北海道大学大学院医学研究院社会医学分野公衆衛生学教室
pp.184-185
発行日 2018年3月15日
Published Date 2018/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401208844
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公衆衛生とは
本稿を執筆するため,過去の「公衆衛生」誌をめくってみました.81巻(2017年)1〜12号の特集だけを見ても,「歯科口腔保健の推進」「人に死を招く動物—人・昆虫・寄生虫」「がん対策の加速化」「原子力災害と公衆衛生—避難指示解除後の地域復興に向けて」「眼の健康とQOL」「食中毒の新たな課題」「予防接種政策」「衛生監視・指導行政の現状と課題」「アルコール健康障害対策の推進」「薬剤耐性(AMR)対策」「薬局・薬剤師の地域展開—コミュニティ・ファーマシー」「地球温暖化対策—2020年以降の新たな国際枠組み」とテーマは多岐にわたっています.そもそも,公衆衛生は英語で「Public Health」.言うまでもなく,publicは人々(集団)を,healthは健康,保健を意味することから,胎児・新生児から高齢者まで,健康な人も病気を抱えている人も,社会で生活する全ての人々を対象として,身体的・精神的健康を守り増進するための実践であり学問分野ですので,上記のような広い守備範囲となるのは当然かもしれません.
一方で,これだけ広範囲な内容を,大学という閉じた空間の中で教育するのは難しいともいえます.学部レベルで公衆衛生に特化した大学はなく,医学部,保健学部などの医療系の学部や,食べること(栄養学部)・身体を動かすこと(体育学部)などの生活習慣に関わる学部などで一部が扱われている程度ではないかと思います.しかし,わが国で加速する少子高齢化,うつ病・自殺者の増加,原発事故による放射能汚染,数年に1回起きる災害,温暖化に代表される地域環境の変化,食の安全など,現在の健康・医療問題への喫緊の対応が求められています.
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