連載 Health for All―尾身茂WHOをゆく・25
フィラリアの話と,国際分野で働く日本人女性の活躍
尾身 茂
1
1WHO西太平洋地域事務局
pp.420-421
発行日 2006年6月1日
Published Date 2006/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100586
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読者の皆さんは,“フィラリア”という感染症をご存知だろうか.今回はこの寄生虫病の話と,一見何の脈絡もない国際分野で働く日本人女性についての私見を述べよう.
フィラリアは蚊が媒介する寄生虫症で,リンパ管炎や発熱などの医学的所見はもとより,象皮病や陰囊水腫などの障害を残し,その病気に罹患した人は社会的差別や偏見を受けてきた(写真1,2).かつては日本でもフィラリア症は広く分布していたことがあり,平安時代の絵巻物には,足の太い宮廷の女性が描かれており,また,江戸時代に描かれた浮世絵にも,大きな陰囊を担いで歩く人の姿が残っている(写真3,4).当時の日本ではまれな病気ではなかったようだ.しかし1960~1970年代にかけて,日本各地で展開されたフィラリア根絶事業により,日本では“過去の病気”となっている.
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