連載 赤いコートの女―女性ホームレス物語・4
聴き語り合うことの試み
宮下 忠子
1,2,3
1元東京都城北福祉センター
2元東京都精神保健センターアルコール問題家族教育プログラム
3現「コミュニティワーカーを考える会」
pp.996-998
発行日 2004年12月1日
Published Date 2004/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100532
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テレビ番組放映のあと
波さんに関するテレビ報道がなされて1週間が過ぎた.路上生活を続ける波さんのもとにディレクターB氏の姿は見えなくなった.波さんは,相変わらず赤いトレパンをはき,赤いコートを着て,いつもの公園のモミの木の下に座っていた.しかし,以前と様相が違っていた.波さんの姿をテレビ番組で見た男たちが流した情報によって,噂は瞬く間に野宿場所の公園を中心に広がった.男たちの波さんに対する関心が一段と強まっていったのである.
波さんの近くの場所で路上生活を続ける男性のホームレス仲間は,「波さんに対して性的な虐待を含んだ嫌がらせが急増した.どこで聞いたのか見たのかわからない」と言って怒りを露わにした.そこには,どん底だからこそ支え合う友情があった.「俺の子どもを産んでくれ」と言って波さんに迫ってくる男もいたという.また2人で雑踏の中を歩いていた時,「腰が抜けるように痛い」と歩行中の波さんから耐え難いほどの苦痛を訴えられたという.
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