連載 赤いコートの女・1【新連載】
女性ホームレス
宮下 忠子
1,2
1元東京都城北福祉センター・東京都精神保健センターアルコール問題家族教育プログラム
2現「コミュニティワーカー制度を考える会」
pp.736-738
発行日 2004年9月1日
Published Date 2004/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100472
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「人ってどんどん堕ちていく」.波さんは,ラーメンの汁をすすり終わり一息つくと,ポツリと言った.私は,はっとしながら「じゃあね,登るしかないでしょう」と,波さんの上気した顔を見つめて言った.
「そう,底なのよ.登るしかないか」.穏やかな眼差しだった.私は内心驚いていた.
女性ホームレスの波さんと知り合って数カ月が経過していた.いつもうまく意思の疎通が図れない関係が続いていた.波さんの本音が今やっと聞けたと感じた.そして,都会の片隅の公園で出会った波さんと,この時からとことん付き合うことになってしまった.それは私自身を見つめ直すことの始まりでもあった.
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