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「ホームレス」という言葉
1990年代中頃から公園,駅,高速道路高架下などで寝起きする人々の姿が目立つようになり,このような人々を「ホームレス」と呼ぶようになったようだ.「ようだ」と述べたのは,「ホームレス」という言葉にきちんとした定義があり用いられているわけではないからである.2002年に制定された「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法」は,「ホームレス」とは「都市公園,河川,道路,駅舎その他の施設を故なく起居の場とし,日常生活を営んでいる者をいう」と定義し,この定義による国の調査(2007年1月)ではホームレスは全国で18,564人と報告されている.
他方,諸外国の例をみるとより広い範囲を意味している.路上生活者だけではなく,シェルターなどの施設利用者,知人や親戚の所に身を寄せている人など住まいを失う危険性の高い人,劣悪な住宅に住んでいる人を含んでいる.
本来のホームレスとは,人間にふさわしい居住が確保できない状態といえる.人間にふさわしいとは,健康,命を守ることができる空間であること,経済的理由や雇用関係により左右されないこと,地域社会において通常の関係が維持できることを含んでいなければならない.このように考えるとホームレスとは,現に路上生活を余儀なくされている人々だけではなく,ホームレス自立支援を目的として多数つくられた宿泊施設などに入所している人々,サウナ・カプセルホテル,あるいはネットカフェで寝泊まりしている人,期限付きの契約で会社の寮や工事現場に付設された宿泊施設に暮らす人,住み込み,退院後の行き先がない人など,実際は特別措置法の定義より広範囲の人々であり,その数は相当数に上ると考えられる.
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