特集 公衆衛生対策におけるクライシスコミュニケーション
クライシスコミュニケーションとマスメディア
井田 香奈子
1
1朝日新聞(社会部)
pp.616-619
発行日 2004年8月1日
Published Date 2004/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100442
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社会への影響が大きい出来事の発生(あるいは発覚)は,たいてい突然であることが多い.報道の仕事を通して,事件・事故などの不測の事態によって,長期間かけて築かれた信頼が一瞬で壊れる場面を見てきた.本来のことの重大さに加え,その後の当事者の説明や情報発信のまずさが,事態をより複雑にしているケースも少なくない.一方でメディア側も,社会の混乱,不安の増幅につながりかねない情報に接した場合に,どこまで報道すべきか,プライバシー保護や風評被害との兼ね合いで悩むことが増えてきたと感じる.
最近では,狂牛病(BSE)事件で輸入肉を国産牛と偽って買い取らせた雪印食品が解散し,鳥インフルエンザの感染を隠した浅田農産は全従業員を解雇する事態に追い込まれるなど,法令や倫理に反する企業や組織に向けられる市民の目は厳しくなっている.社会的関心も高く,メディアも大きな取材対象として向き合ってきた.
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