特別寄稿
クライシス・コミュニケーションとは何か
田中 正博
1
1田中危機管理・広報事務所
pp.653-656
発行日 2005年8月1日
Published Date 2005/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100126
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「人は起こしたことで非難されるのではなく,起こしたことにどう対応したかによって非難されるのである」.クライシス・コミュニケーションについてこの言葉ほど,端的に明快に語るものはない.2000年7月,東京商工会議所が発刊した小冊子『企業を危機から守るクライシス・コミュニケーション』は,この冒頭の一文から始まっている.ちょうどこの時期,日本中の関心の的となった雪印乳業食中毒事件と三菱自動車のリコール隠し事件が相次いで発生したこともあって,クライシス・コミュニケーションに対する関心が産業界やマスコミ界に一気に高まった.筆者はこの小冊子の執筆に携わった関係上,多くのマスコミ記者から取材を受け,同時に彼らの所感を聞くことができた.共通した指摘は「まったくこの通りだ.何か問題を起こして“失敗”したケースは,ほとんどクライシス・コミュニケーションの失敗と言っていいね」,ということであった.
世の中には,さまざまな概念を示すおびただしい数のヨコ文字がデビューするが,「クライシス・コミュニケーション」は,冒頭の一文によってほとんど即座にすべての人々が同じ理解をすることができる,珍しいケースであろう.
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