連載 現場が動く!健康危機管理・7・最終回
健康危機管理における疫学―自然災害時の初期評価とサーベイランス
中瀨 克己
1
1岡山市保健所
pp.995-999
発行日 2005年12月1日
Published Date 2005/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100209
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阪神淡路大震災時における医療救護
阪神淡路大震災時,私は,神戸市中央保健所において医療救護の調整に携わった.中央区では被災民3万9,000人,避難所96か所.救護に携わった保健・医療関係者は1,984班,延べ1万人に及んだ.地域防災計画では,被災時の応急的医療は救護所においてなされる.当時神戸市では,救護所の設置は保健所長が行うことになっていたため,私は保健所職員としてこの業務を担当することになった.神戸市内の激甚6区内では医療供給は大きな被害を受け,被災10日目に開設していたのは病院では84%であったが,診療所29%,歯科診療所では15%しか運用されていなかった.
神戸市中央区における医療救護は,被災2日目から日本赤十字社など3班による避難所巡回診療を行った.全国から多大な援助を受け,被災4日目には救護班は20班となり,規模の大きな避難所等に常設の救護所を設置することができた.保健所は,これら救護チームに必要医療用品等を供給すると共に,毎日診療状況の報告を受けた.しかし,当時,管轄区域内の医療需要を把握し適切な医療を供給するための被災後の評価や,救護提供基準,そして需給や疾患の継続的把握(サーベイランス)という考えや技術を持っていたわけではなかった.
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