特集 自然災害と公衆衛生活動
地域の被災対処能力を評価する
上原 鳴夫
1
1東北大学大学院医学系研究科国際保健学分野
pp.440-444
発行日 2005年6月1日
Published Date 2005/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100096
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国連は1990年から10年間を「国際防災の10年」と定めて,自然災害に対する予防面での取り組み強化を図ってきたが,その成果を継承発展させるために,2000年に国際防災戦略(ISDR)プログラムを設立した.国際防災戦略は,現代社会における災害対応力の強いコミュニティの形成,災害後の対応中心から災害前の予防・管理への進化,を主たる目的とし,活動の4つの柱として,①現代社会における災害リスクについての普及・啓発,②災害防止に対する公的機関の主体的参画の促進,③災害に強いコミュニティ形成に向けた地域住民の参画の促進,④社会経済的損失の減少に向けた取り組みの強化,を掲げている.
災害は「被災地の外部から多大な支援を必要とするような規模の損壊,生態系の破壊,人命喪失,人々の健康および保健医療の悪化をもたらす出来事」と定義される(WHO:世界保健機関より).災害をもたらすのは,自然現象の物理的な大きさと,被災地域が備える対処能力との相対関係である.地震など自然現象の発生を防止することは難しいが,事前の活動により,そのインパクトを吸収して災害に至ることを防止したり,災害効果を軽減することは可能である.災害は「1回の不運」ではなく,繰り返すサイクルである.災害のない穏やかな時期は「災害間期」に過ぎず,この時期にこそ万全・周到な備えをしなければならない(図1).
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