特別寄稿
法学部で疫学を教える(少なくとも)3つの理由
坪野 吉孝
1
1東北大学公共政策大学院
pp.297-300
発行日 2005年4月1日
Published Date 2005/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100066
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公衆衛生の課題が多様化するに従い,保健医療の専門家だけではなく,社会科学をはじめとする他分野の専門家が,問題解決に参加することの重要性が増している.公衆衛生の基礎科学である疫学を,保健医療系以外の学生に教えることも,これから大切かもしれない.平成16年度に筆者は,東北大学法学部で,疫学を主体とする「健康政策学」の講義を行った.講義の概要を紹介しながら,保健医療の枠の外で疫学を教えることの意義について考えてみたい.
健康政策学講義
講義は大きく分けて4部構成で行った(表1).第一は「科学情報のコミュニケーション」で,医療や健康に関する仮説を科学的に検証するためのプロセスについて解説し,メディアの健康報道の問題点を説明した.第二は狭義の「疫学」で,因果関係の評価の方法論を整理しながら,各種の研究デザインについて,ダイオキシンの健康影響(後向きコホート研究)や医療事故の危険因子(症例対照研究)などの事例を使って解説した.第三は,疫学と関連の深い政策分野としてわが国の「がん対策」を取り上げ,たばこ訴訟の判決を検証し,神経芽細胞腫スクリーニングの休止(平成15年度)をめぐる経緯をまとめた.第四は「健康の国際政治学」で,健康の視点から見た今日のグローバル社会の姿を考察した.
また5人のゲストを講師に招き,メディアの医療報道,がんと心理,国際保健について,現場の第一線での経験をもとに話していただいた(表2).講義は,平成16年度の後期(平成16年10月~平成17年1月)に,毎週火曜日の1時間目と2時間目(午前8時50分から正午まで)を使い,合計で13回行った.
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