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はじめに
岩手県は本州の北東部に位置し,日本の総面積の4%を占め,北海道に次ぐ広さです.岩手県内陸部の大部分は山岳丘陵地帯で占められ,西部には秋田県との県境に奥羽山脈が連なり,これと平行する形で東部には北上高地が広がっています.この2つの山系の間を北上川が南に流れ,その流域に平野が散在しています.
岩手が生んだ詩人宮沢賢治は,豊かな自然に恵まれた大地をドリームランドと捉え,「岩手」をエスペラント語で「イーハトーブ」と呼びました.しかし,宮沢賢治の心象とは裏腹に,恵まれた自然は厳しい立地条件でもあり,医療・保健の分野で大きな重圧となったことは否めない事実であります.特に,陸の孤島と言われた過疎地域における高い乳児死亡率は,岩手県民の暗い記憶であると同時に,公衆衛生の向上・発展のための起爆剤ともなりました.国土の4%を占める広大な県土に,日本の総人口の1.1%に相当する140万人(平成15年)の県民が居住していますが,少子高齢社会の例に漏れず,高齢化率は22.8%(平成14年)となっています.
厚生労働省発表の人口動態統計(確定)によれば,岩手県の平成14年における死亡数は12,941で,人口10万対死亡率は911.3となり,全国で第11位です.また,がん・脳卒中・心臓病の3大死因に限っても,全死亡数の6割を占め,他県と同様の傾向にあります.疾患別に見ると人口10万対死亡率(全国順位)は,全がん267.2(16位),胃がん42.7(18位),大腸がん40.3(2位),肝がん21.2(42位),肺がん48.1(18位),乳がん12.9(38位),子宮がん6.8(39位),心臓病143.6(8位),脳卒中150.5(5位)となっています.特にワースト10以内では5位の脳卒中と8位の心臓病とが目につきますが,これが岩手県の特徴と言えるかもしれません.
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