視点
わが国の都市と健康政策―少子高齢化を超えて
唐澤 祥人
1
1東京都医師会
pp.90-91
発行日 2005年2月1日
Published Date 2005/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100027
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近世の都市開発と東京
徳川家康公江戸開府以来400年余,東京は世界的な大規模都市として各時代を背景とした変貌を続けております.中世の江戸といえば葦や芦の生い茂る,洪水を繰り返す原野で,そこに発展する都市を描き得た当時の為政者の慧眼に驚嘆します.周囲の山塊の豊かな水源は幾筋もの河川を作り,都市環境の保全と水運を可能にし,江戸湾の海運と結んでこのような経済産業上の絶対的な優位性に,大都市開発への確信を持ったのでしょう.巨木の研究者は,巨木(根の幹周り3m以上)が最も多いのが西多摩の山塊であるとしており,栄養豊富な河川の流れは多摩の台地を流れ下って,ついには豊富な江戸前の魚群の育成にも役立つことになります.大気の還流も山塊から平地や,河川の上空や海から内陸と,広く還流を繰り返しています.このように江戸という土地の自然の地勢を破壊することなく開発・利用がなされたことを,大切にしなくてはならないと思います.
産業革命以後の都市
明治期以来のわが国は,産業革命後の近代化の波に乗って,燃料資源確保,機械化の推進,大量の物流の確保などと共に,都市は増加する居住区や生産工場の拡大,管理事務部門,教育文化的施設,公園や保養施設・医療施設なども爆発的に拡大しました.瞬く間に電気,ガス,水道と通信,交通システムなどが際限なく広がって,都市空間を充塡してきました.このような発展の歴史の流れの中で,置き忘れてきたものが今日,市民の生命・健康のみならず,自然との調和にまで影響するようになってきたのであります.
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