特集 超少子化と向き合う
わが国の少子化に伴う家族の変化と今後の展望
津谷 典子
1
1慶應義塾大学経済学部
pp.568-572
発行日 2009年8月15日
Published Date 2009/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101607
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
わが国は世界で最も人口高齢化が進んだ国のひとつである.この最大の要因は,「少子化」と呼ばれる人口置換水準以下への出生率の継続的低下である.わが国の出生率は1970年代半ばに置換水準を割り込み,その後も低下を続けている.置換水準とは人口再生産が全うされる水準のことであり,具体的には純再生産率(NRR)が1.00の状態を指す.これを女性1人当たりの子ども数の指標である合計特殊出生率(TFR)に換算すると,約2.1人弱の水準に相当する.出生率が長期にわたりこの水準を割り込むと,人口は早晩減少を始める.わが国だけでなく,すべての欧米先進諸国は,1960年代後半~80年代前半に少子化を経験した.また,NIESと呼ばれるアジアの工業国でも近年急激な少子化が起こっている.
結婚しないと子どもを産まない傾向の強いわが国では,少子化は主に20~30歳代の女性の結婚の減少(つまり「未婚化」)により起こっている.そこで本稿では,戦後のわが国の出生率の動向を概観し,少子化の最大の要因である未婚化とその社会経済的背景を分析し,他の先進諸国との比較を通して少子化と女性の社会的地位の関係を検討する.そして,これらを基に,わが国における少子化をめぐる政策的対応の方向性について考えてみたい.
Copyright © 2009, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.