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性暴力を受けた経験のある人(性暴力サバイバー:以下,サバイバー)が妊娠・出産を経験する際,助産師のケアがどのように影響するのでしょうか。ポジティブな出産体験は,妊産婦の自信を高め母親になる過程を促進することが知られています1)。特に,子どもの頃に性的虐待を受けたサバイバーの場合,妊娠・出産は困難を経験しやすい重大なイベントであり,身体に虐待の記憶がある(無自覚の場合もある)ため,妊娠・出産期に経験するトリガーによって,虐待経験のフラッシュバックを生じることがあります。しかしながら,助産師などのケアラー(医療者・非医療者両方を含むケア提供者)から親切で尊重されるケアを受けることによって,サバイバーは自分が受け入れられたと感じ,癒され,トラウマ後の成長を遂げることもできるのです。一方,不親切で尊重されずに距離を感じるケアを受けた場合,サバイバーは再トラウマ化やPTSDに苦しむことになります2)。このように,助産師を含むケアラーによる適切な妊娠・出産ケアは,サバイバーにポジティブな出産体験をもたらすと同時に,その後の人生に大きな意味をもちます。
そこでこの稿では,2017年2月にシアトルで開催されたWhen Survivors give birth: Understanding and healing effects of early sexual abuse on childbearing women教育者養成セミナー(以下,WSGBセミナー)2)を私が受講したことを契機として,日本の仲間たちとともにチームで取り組んできた活動での学びを基に,子どもの頃に性暴力を経験したサバイバーに効果的な妊娠・出産ケアのポイントについて述べたいと思います。WSGBセミナーでは,性暴力サバイバーへのケアのポイントである8項目のキーコンセプトが説明されました[図]。これらについて具体例を示しながら説明していきます。

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