特集 すべての女性は傷ついている トラウマ・リカバリーと妊娠・出産
【身体にアプローチするケア】
身体にアプローチするソマティック・エクスペリエンシング(SE)TM療法の可能性
永松 未生
1,2
1医療法人学而会 木村病院
2心理研究所しゅはり
pp.392-400
発行日 2025年10月25日
Published Date 2025/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.134781680790050392
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筆者は30年近く精神科で心理臨床を行う傍ら,母子保健で20年近く仕事をさせていただいている。近年は,心理療法の一つである「ソマティック・エクスペリエンシングTM療法」(Somatic ExperiencingTM療法:以下,SETM療法)を学び,日々の心理臨床に身体的アプローチを取り入れ,その効果を感じている。
SETM療法は,対話の内容だけでなく自律神経系の反応に注目することで,トラウマ*1により凍りついたクライエントの自律神経系がゆっくりと動き始め,本来のエネルギーの流れを取り戻していくプロセスをサポートする。筆者がまだ駆け出しだった頃,傾聴を主体とする面接を行っていたときに,回復のプロセスが進んだと思っても,フラッシュバックが起きるとあっという間に元に戻る,もしくはもっと具合が悪くなるクライエントを前に,「この無力感をどう生き延びればいいのか」と途方に暮れていた。一方で,遊ぶことのできなかった子がプレイセラピーでのびのびと遊べるようになり,表情だけでなく体の使い方そのものが変わって元気になっていく様子に目を見張った。

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