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Ⅰ.はじめに
人口の高齢化とともに70歳以上の高齢運転者数は年々増加している(図1).2023年末の運転免許保有者数は,約8,186万人であり,そのうち75歳以上の高齢者は約728万人で8.9%を占める(警察庁交通局運転免許課,2024).65歳以上の高齢運転者による交通死亡事故件数は減少傾向にあるが,免許保有者10万人あたりの75歳以上の交通死亡事故は,5.3件であり,75歳未満の約2倍である(警察庁交通局,2024).また,75歳以上の運転者は,75歳未満と比較して,ブレーキとアクセルの踏み間違いなどの「操作不適」が多い(警察庁交通局,2024).
現在の運転免許更新制度(図2)において,75歳以上の運転者には,認知機能検査と高齢者講習が義務付けられている.認知機能検査により認知症のおそれがあると判定された場合,医師の診断を受ける必要があり,認知症の診断があれば免許の取消しなどが行われる.また,一定の違反歴がある運転者は,運転技能検査を受検する必要があり,これに合格しなければ免許証が更新されない.後期高齢者にとって運転免許の更新時期は,自身の運転能力と今後の生活を考える節目となり,更新か自主返納かを悩む時期ではないかと思われる.運転免許の自主返納制度は,1998年より導入され,年々自主返納件数が増加したが,2019年をピークに減少傾向にある.とはいえ,2023年では75歳未満の自主返納件数約12万件に比べ,75歳以上が約26万人であり,後期高齢者の返納件数は2倍以上である(警察庁,2024).免許返納後の移動支援については,官民でさまざまな代替移動サービスを提供しているが,自由に外出する機会が減り社会生活が停滞することによる身体的・精神的・社会的フレイルのリスクが懸念されている.
日本老年学会あり方委員会は,このような高齢運転者を取り巻くさまざまな現状と課題を科学的に分析・整理し,免許返納ありきではなく,高齢者の安全な運転生活の継続を支えるための検討を分野横断で行う目的で,2020年に高齢者の運転に関するワーキンググループ(代表:荒井秀典日本老年学会理事長)を立ち上げた.その後,勉強会を重ね,検討した内容は,2021年6月の日本老年学会合同シンポジウム「高齢者と運転−ハンドルの重みと自立のはざまで−」と2023年6月の日本老年学会合同シンポジウム「高齢者の自動車運転をめぐって」にて発表し,意見交換を行った.この過程を経て,2024年3月に「高齢者の自動車運転に関する報告書」を発行した.本報告書は,日本老年学会のホームページに掲載されているので,是非お読みいただきたい.高齢者の自動車運転や健康支援にかかわる専門職,行政機関,企業などに活用され,高齢者の安全な運転の支援,免許返納後の生活支援にむけた適切な対応や新たな取り組みにつながることが期待される.
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