連載 患者との時間 臨床の言葉・第2回
臨床芸術劇場(クリニカル・アート・シアター)
新城 拓也
1,2,3
1しんじょう医院
2神戸市立医療センター中央市民病院緩和ケア内科
3甲南大学
pp.418-427
発行日 2026年9月15日
Published Date 2026/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.134170450310050418
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「生存」と「実存」のあいだ
よい医療面接とは、正しい説明ではなく、次の診察につながる時間をつくることである。今回はその話をしたい。さて、この2か月の間に、私は話題の映画『急に具合が悪くなる』(196分の長編)を2度鑑賞した*1。原作を読んだのは2019年である。がんを患う哲学者と人類学者による知的でありながら情緒的な往復書簡は、当時の私に大きな影響を与え、自分の仕事の仕方そのものを変えるきっかけとなった*2。正しい知識によって患者を啓蒙し、「よい患者」へ教育し、さらに「よい人生」へ導こうとする力が、臨床には満ちている。そのことに気づき、自らの診療を見直した。
あれから7年が過ぎた。映画を観て、もう一度原作を読み返すと、当時とはまったく異なる印象を受けた(映画も原作もぜひ勧めたい)。この間のコロナ禍は、やはり医療者の意識を大きく変えたのである。私には、「生存」が前景化し、「実存」が後景へ退いたように思える。

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