連載 暮らしの手触り・第12回【最終回】
わかりにくさへのまなざし
坂井 雄貴
1,2
1にじいろドクターズ
2ほっちのロッヂの診療所
pp.68-69
発行日 2025年1月15日
Published Date 2025/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.134170450300010068
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私が働くほっちのロッヂは、わかりにくい場所だ。まず、初めて来る人はだいたい迷う。小さな看板が道沿いに顔を向けているけれど、夏になると草が茂ったりして見えにくくなる。ホームページを見ても、「誰が働いているのか、何をしているところかわからない」とよく言われる。ネットで調べればマップには診療所として表示されるが、私たちはケアの文化拠点として活動していて、診療所があるだけではない。ほっちのロッヂができてもうすぐ5年になるが、そこで働く私自身も、何をわかりやすくして、何をそのままにするのか、ずっと悩み続けている。
思えば人の健康の支援に関わりたいと思いながら、医師の仕事として「病気」を通して人に線を引くことに違和感が重なり、軽井沢にやってきた。ここでなら、暮らしの中にあるよろずの事ごとを切り分けずに人の健康に関われるかもしれない。そう思い、軽井沢のカラマツ林に足を踏み入れたのだった。そして日々を過ごすなかで、切り分けることはわかりやすさにつながっていて、わかりやすさに人は安心するのだと、気付かされた。
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