連載 ウェルビーイングが導く患者中心の医療の未来・4
ウェルビーイングの視点から考える患者の最善の利益—臨床倫理の観点から
清水 幸裕
1,2
,
前野 マドカ
3
,
秋山 美紀
4
1特定医療法人財団五省会 西能病院 内科
2前南砺市民病院
3EVOL株式会社
4慶應義塾大学環境情報学部
pp.706-710
発行日 2025年8月10日
Published Date 2025/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.091713550350080706
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臨床倫理との出会い
私は消化器内科,特に肝臓疾患を専門としており,これまで大学病院や市中病院において,数多くの肝炎,肝硬変,肝がんの患者さんの診療に携わってきました。診療にあたっては,常に医学的エビデンスを基盤としつつ,患者さんとの対話を重視し,それぞれの患者さんにとって最も適した治療法を共に考える姿勢を大切にしてきました。しかしながら,そうして選択した治療が,本当にその患者さんにとって最適,あるいは最善のものであったのか,確信が持てずに悩むことも少なくありませんでした。
2015年に日本臨床倫理学会の存在を知り,「ここで何かヒントが得られるのではないか」と期待して,同年3月に開催された第3回年次大会に参加しました。そこで臨床倫理の議論に触れ,それまで抱いていた疑問に対する多くの手がかりが含まれていることを実感し,また,「患者中心の医療」において患者の最善の利益を考えることの重要性をあらためて強く認識しました。この経験をきっかけに,同年5月には自院に臨床倫理委員会と倫理コンサルテーションチームを立ち上げ,以来,チームで継続的に学びながら,倫理的課題を含むさまざまな事例の検討に取り組んできました。

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