連載 作業療法を深める・第109回
協働に活かす自他尊重の自己表現について(前編)—アサーションの基本的な考え方
隅谷 理子
1,2
Michiko Sumitani
1,2
1大正大学(臨床心理学部)
2一般社団法人日本アサーション協会
pp.354-359
発行日 2026年4月15日
Published Date 2026/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.091513540600040354
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
アサーションの本質
アサーションは,コミュニケーションに関する心理教育で広く取り上げられている.アサーションのもつ具体的な自己表現の技法は,コミュニケーションを考えるうえでよりどころになるため,学ぶことには意義があり必要である.しかし,心理教育の場で語られるアサーションは,しばしば「上手な断り方」や「効果的な伝え方」といった技法に焦点が当てられ,その本質が見失われているように感じる.アサーションの本質は,単なるコミュニケーション技術ではない.アサーションは,一人ひとりの基本的人権を大切にし,共に生きるための思想であり,哲学である.人々が共に生き,協働的な関係を築くために,自他尊重の自己表現を大切にするというアサーションの本質を理解することが重要である.
筆者は長年,当法人の前代表でもある平木典子のもとでアサーションを学び,産業心理臨床や学校教育の現場でアサーションを伝え続けてきた.その中で痛感するのは,技術だけを学んでも,人間関係の本質的な改善には至らないということである.なぜなら,アサーションが求めているのは,表面的な言葉遣いの変化ではなく,自分と他者をどう捉え,どうかかわるかという根本的な態度の転換であり,そこから生まれる自己表現の変容が重要だからである.

Copyright © 2026, MIWA-SHOTEN Ltd., All rights reserved.

