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はじめに
パーキンソン病(Parkinson's disease:PD)は,加齢とともに発症率が高まる神経変性疾患であり,世界的な高齢化の進展に伴い患者数が増加している.さらに,世界人口の増加に比例してPD患者も増加する傾向にあり,2040年までに世界の患者数が1,200万人を超えると予測されている1,2).日本では2007年(平成19年)に65歳以上の人口の割合が21%を超え,超高齢社会に突入した.その後も高齢化率は上昇を続けており,2020年(令和2年)に厚生労働省が実施した「患者調査」3)によれば,日本におけるPD患者数は推定28.9万人と推定され,さらなる増加が懸念されている.
2018年(平成30年)ごろから「パーキンソンパンデミック」という表現が用いられるようになった2).この言葉は,世界的なPD患者数の急増を示すとともに,高齢化や環境要因による疾患の拡大への警鐘の意味を含んでいる.パンデミックという言葉は通常,世界的な感染症の大流行を指すが,非感染症であるPDに対してもその脅威の大きさが指摘されている.今後,PD患者の増加に伴う問題はさらに深刻化すると予想され,個人から社会全体に至るまで包括的な対応が求められる状況にある.
PDは慢性的かつ進行性の疾患であり,その治療には長期的な医療および介護が必要である.現在の治療法は主に症状のコントロールを目的としており,根治療法は存在しない.したがって,疾患の進行を抑制する効果的な治療法の開発が急務である.また,PDは身体的症状だけでなく,患者とその家族に精神的および経済的負担を及ぼすため,社会的な支援が不可欠である.専門医療チーム4)の育成や介護システムの整備が求められるほか,早期診断と適切な治療を促進するための一般市民や医療従事者への教育が重要とされる.

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