講座 作業療法士のための“やさしい”脳画像講座—脳画像から臨床像を読み解く・第3回
高次脳機能障害の予測と鑑別過程における留意点
酒井 浩
1
,
三村 將
2
Hiroshi Sakai
1
,
Masaru Mimura
2
1藍野大学大学院
2慶應義塾大学予防医療センター
pp.254-259
発行日 2025年3月15日
Published Date 2025/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.091513540590030254
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
第1回および第2回で,脳の機能解剖の要点と,重要部位の特定方法について学んできました.高次脳機能障害を特定するために,鑑別すべき,紛らわしい他の症候があります.高次脳機能障害の「ある1つの症候」であることを証明するためには,その紛らわしい症候のことも知っておかなければなりません.また,スクリーニングで気になった場面があれば,まずは,その場面のどのような工程で,どのように違和感が生じたのかを明らかにすることが症状鑑別の始まりとなります.その際,感じられた違和感を文書化し,知識と経験から候補となる症候を挙げます.また,同時併行で脳画像を確認し,ほかにどのような症候が出現し得るのかを確認します.臨床推論では,自分が最も可能性が高いと考える症候である証拠を揃えていく流れと,病巣から出現し得る他の症候を除外していく流れという2つの思考の流れをつくり,掘り下げ検査と確認検査を通して仮説を実証していくことで,信頼性の高い症候特定を心がける必要があります.症候によって必要な介入方法が異なるため,症候の特定を見誤ると,患者の時間を無駄に浪費するだけでなく,場合によっては回復を妨げるような介入を行うことになるかもしれないのです.ですから,症状鑑別は慎重かつ正確に,しかも迅速に進めなければなりません.

Copyright © 2025, MIWA-SHOTEN Ltd., All rights reserved.