連載 臨床実習サブノート 効果的かつ安全な起居動作へのアプローチ・第9回
脊髄小脳変性症
山中 雄翔
1
Yuya YAMANAKA
1
1大阪大学医学部附属病院リハビリテーション部
pp.1493-1497
発行日 2025年12月15日
Published Date 2025/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.091505520590121493
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脊髄小脳変性症の概要
脊髄小脳変性症(spinocerebellar degeneration:SCD)は,小脳性運動失調を主症状とする進行性の神経変性疾患です.正常な運動は,複数の筋肉や関節の動きが,時間的・空間的に精密に調整されて初めて成立します.運動失調とは,運動の遂行にあたって,関与する複数の筋群が協調的に活動しない状態1)を指します.小脳機能に障害が生じると,筋緊張の低下・平衡障害・協調運動障害を来します2).臨床的には,SCDは小脳症状のみが目立つ「純粋小脳型」と,小脳以外の病変による症状が加わる「非純粋小脳型」に大別されます3).特に,非純粋小脳型のなかでも多系統萎縮症では,運動失調に加えて,パーキンソニズム,自律神経不全,錐体路徴候を種々の程度で認めるうえ,症状の進行も非常に早いため,活動は大きく制限されます4).また,多系統萎縮症では,自律神経不全のなかでも起立性低血圧が頻発します.なかにはリハビリテーション介入中に血圧が低下し,失神や転倒を来す可能性もあります.
こうしたリスクに対応するためには,カルテからシェロングテストの結果を事前に確認したり,過去の失神歴を問診で把握したりすることが重要です.重度の起立性低血圧が認められる症例に対しては,血圧測定を行いながら評価を進めるとともに,体位変換の際にはいったん休息を挟みながら次に進むよう指導することが必要です.
*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2028年12月31日).

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