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はじめに
近年,日本の医療機関は深刻な経営環境に直面している.2024年には医療機関の倒産件数が64件,休廃業・解散が722件に達し,いずれも過去最多を更新した1).また,2030年には医療・福祉業界における人手不足が約187万人に達すると見込まれ2),2023年度の医療費は約47兆円で3年連続過去最高を更新するなど3),医療提供体制の維持に深刻な影響が懸念されている.
こうした状況を背景に,医療機関などの業務効率化はきわめて重要な課題となっており,digital transformation(DX)によるコスト削減にとどまらず,医療の質の向上や医療従事者の負担軽減が期待されている.そのなかでも,artificial intelligence(AI)の活用には多面的なメリットがあると考えられ,具体的には診療録の入力時間削減やヒューマンエラーの低減,さらに医師や看護師の事務作業時間を短縮することで,バーンアウトリスクやストレスを軽減する効果が期待されている4〜6).また,デジタル技術を活用して診療録記載などの業務負担を軽減すれば,患者や家族への説明・対応に割ける時間を増やすことが可能となり,結果的にリハビリテーションを含む医療サービス全体の質をさらに高める効果が期待できる.特にリハビリテーションの現場では,患者とのコミュニケーションを通じてモチベーションを引き出すことが重要であり,そのための十分な時間と人材を確保する手段として,AIは大きな役割を果たし得る.
筆者が所属するSDX研究所はこうした医療現場のニーズに応えるべく,AIを活用した業務改善プロジェクトを推進している.本稿では研究や事例を踏まえ,その取り組みの一部を紹介する.

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